よく寝るとフリースローが決まるようになる?

「睡眠負債」という概念が最近注目を集めている。日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼすおそれのある状態のことだ。日常的に睡眠負債をため込んでいると「がん」や「認知症」のリスクが高くなる。日本人の睡眠時間は、およそ4割が6時間以下で睡眠負債になっている可能性が高い。睡眠負債の問題は「自覚症状が無い」ということ。ペンシルベニア大学が行った研究によれば、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳の働きは、2晩徹夜したグループと同程度まで低下している。(Dinges, D. F.1997)
この現象が、スポーツのパフォーマンスに影響を及ぼしているか否かを検証した研究がある。スタンフォード大学のCheri博士の研究で、睡眠時間でフリースローの成功率が変化することが証明された。
スタンフォード大学のバスケットボール部所属の大学生の睡眠時間を管理して実験を行っている。最初には1日10時間位上の睡眠時間を確保するようにして4週間生活してもらい、その間に3つのテストを繰り返し行う。その後、各PLAYERにはいつもどおりの睡眠時間に戻し(4-6時間)3つのテストを繰り返し行った。イコールコンディションにこだわり、20人の被験者10人は、「10時間睡眠」→「日常睡眠」にし、残りの10人は順番を変え「日常睡眠」→「10時間睡眠」として実験を行った。
パフォーマンスの違いを測定するテストは3種類実施された。
1つめのテストは、バスケットコートのゲースラインからハーフコートまで282フィートを走る速度だった。
第2のテストは、フリースローの成功率。第3のテストは3ポイントシュートを3方向から5回づつ行った時の成功率だった。いずれも大学NCAAでプレーするバスケットボールPLAYERにとって日常的な行為であり、実験期間中にPLAYERがテスト種目の技術が向上する可能性は極めて低いものばかりにした。
その結果が上表だ。282フィートスプリントタイムは、10時間睡眠をとった場合に1.086秒も早くなっている。フリースロー成功回数は15回投げて、1.00回増加。3ポイントシュートも15回投げて、1.85回も多くなっている。
では、睡眠時間が長くなると何故スポーツのパフォーマンスが良くなるのだろう。ひとつには認知能力の向上がある。被験者が視覚刺激に応答する速度を示す、精神運動警戒タスク(PVT)は10時間以上の睡眠で早くなることが既存研究で立証されている。(Waterhouse 2007)

一方で10時間位上の睡眠によって、パフォーマンスが上がるのではなく、本来のパフォーマンスが出ていると考えられている。「睡眠負債」によって、PLAYERが練習によって手に入れた技術や、持って生まれた才能を失っているのだ。今までは、「栄養」「コンディショニング」「コーチング」などによってPLAYERのパフォーマンスは変化すると考られていたが、今後は睡眠時間も重要な要素となっていくだろう。
この実験では10時間位上の睡眠を4週間続けているが、現実的には2週間程度続ければ、本来のパフォーマンスになると、他の研究で示されている。NCAAレベルの競技を極めたPLAYERで差がハッキリ出るのだから、凡人にはもっと大きな影響がありそうだ。睡眠負債については、様々な研究が行われており、単純な「計算」や、英単語の「記憶」などでもパフォーマンスに差が出ることが証明されている。
とにかく今日から、毎日充分に睡眠をとることがよさそうだ。

【参考文献】
Dinges, David F., et al. “Cumulative sleepiness, mood disturbance, and psychomotor vigilance performance decrements during a week of sleep restricted to 4–5 hours per night.” Sleep 20.4 (1997): 267-277.
Mah, Cheri D., et al. “The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players.” Sleep 34.7 (2011): 943-950.
Waterhouse J,Atkinson G,Edwards B,Reilly T. The role of a short post-lunch nap in improving cognitive, motor, and sprint performance in participants with partial sleep deprivation, J Sports Sci, 2007, vol. 25 (pg. 1557-66)

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